「超小型」出版
(Kindle版)

シンプルなツールとシステムを電子出版に

クレイグ・モド

「やがて業界を脅かすと言われているものたちは、
概して質が低く、注目に値しない」— ジョシュア・ベントン

では、そこに注目してみよう。今の電子出版はまだかなり複雑なものである。メディアとしても、まだ電子の世界とはかけ離れている。

これからの電子出版の基本方針や最適な解決策を提案する「超小型宣言」とは?


Kindle版とweb版について。
下のweb版で無料で読めるのに、なぜKindle版を買う人がいるの?

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クレイグ・モドは、作家、パブリッシャー、デザイナー。拠点はカリフォルニア海岸地域(ときどき東京)。MacDowell Colonyライティングフェロー、TechFellow Award受賞、2011年にはFlipboardのプロダクトデザインを担当。New Scientist、The New York Times、CNN.comなど様々な媒体に寄稿している。

「超小型」出版
(Web版)

シンプルなツールとシステムを電子出版に

クレイグ・モド (訳:樋口武志) The Honda N360
 
“私は神を見る。確実に動く計器や機械の中に” バックミンスター・フラー
 

…ZIPドライブはフロッピーを食った。
CDはZIPを食った。
DVDはCDを食った。
SDカードはフィルムを食った。
液晶はブラウン管を食った。
電話は電信を食った。
メールは会話を食った。
そして今タブレットが紙を食おうとしている …


ここに一台のテーブルがある。
縦横何百メートルもある木製のテーブル。
使い古されていてオイル仕上げ。
年季が入っていて節が付いている。
使うには十分の大きさ。

さあ —— 大空の下、僕たちが持っている電子出版ツールを全部、このテーブルにぶちまけてみよう。インフラ設計に文字デザイン、プラットフォームにデバイスの雨あられ。みんな最小単位に分解してしまおう。そしてテーブルに並べるんだ。

はしごを持ってくる。
テーブルの横に置く。
はしごを登って、テーブルを見下ろす。

何が見える? 何を作る?

The Magazine, a transparent png

雑誌

初めてThe Magazine(ザ・マガジン)を見たときは、笑顔がこぼれた。

よく配慮され、とても理にかなった作りだということが、一目見てわかったからだ。

それはまさに理想のモバイル出版物のようだった。無駄な作りは一切なし、あるのは必要なものだけ。これまで日の当たらなかったもの。やるべきこと以外、手の込んだことは一切ないアプリ。出版の未来を考える人々からは、正直言ってつまんないから、と忌み嫌われていたようなアプリ。 こんなアプリ見たことあるよって思うけど —— 本当にそうだろうか?

名高いハーバード・ビジネス・スクールの教授、クレイトン・クリステンセンとの新聞業界についての対話の中で、ジョシュア・ベントンは次のように語っている。「やがて業界を脅かすと言われているものたちは、概して質が低く、注目に値しない」。[1]

じゃあ注目してみよう。

車と出版

1967年、ホンダのN360がベールを脱いだ。

N360はシンプルな軽自動車、「超小型」な車だった。

Honda N360
ホンダN360 — セクシーで小さな車 — KEMEKO1971より

ホンダの技術者たちが身を寄せ合い、話し合っている光景を想像するのは楽しい。使い古された木製のテーブルに、歴代のカーデザインと生産技術を並べている。集まった彼らはこぞって考える。「この材料で作れる一番シンプルなものはなんだろう?」

この問いから出発して、ホンダは —— 1949年からオートバイの生産を、1963年から車の生産を開始したばかりのこの会社は —— ミニクーパーからヒントを得た車体に、オートバイをベースにしたエンジンを搭載した。31馬力。確実に動く。手頃な価格。リットル16キロ以上の燃費。[2]

N360は、アメリカの自動車会社では決して考えつかない製品だった。だからといってアメリカを批判することはできない。アメリカには、こうした商品に思いを馳せる利点がなかったのである。アメリカの自動車業界とは違い、日本の自動車業界は、それまでの業界の動向や伝統から恩恵を受けていなかった。そして伝統から恩恵を受けていないとき、人は厚かましくも堂々と突き進むことができる。

ソフトウェア業界には「実用最小限の製品」(MVP: Minimum Viable Products)という言葉がある。N360はまさに、実用最小限の車だった。

N360はアメリカで成功しなかったが、同時に設計を始めた —— N360とほとんど変わらぬかわいさの —— N600は成功を収めた。次に「シビック」が続き、その直後、オイル・ショックが訪れた。それから先のいきさつは、皆がよく知るところだろう。

“日本の自動車業界は、安価な軽自動車から始まったが、それは広く冗談として受け止められた。彼らは今や、レクサスを作り、ヨーロッパの基準で最高品質のものにチャレンジしている。”[3] — クリステンセン、スコック、オールワース

ホンダは自動車業界において何者でもなかった。しかし彼らは、多くの消費者に適した車を開発し、足場を固め市場のシェアを獲得していった。彼らは「超小型」を生み出したのだ。

そこで僕はこう問いたい。「超小型な電子書籍ってなんだろう?」

電子書籍の現状

紙の本や雑誌は、直感的に読み方がわかる。読者が選ぶのは二つだけ —— 言葉と文化だ。そしてその後は、ひたすら読み進めればいいわけで、読み方は一目瞭然である。[4]

タブレットやスマートフォンの本や雑誌の読み方は、一目瞭然とは言えない。一目瞭然でないが故に、しばしば読み方を説明するチュートリアルが必要になる。

How to read.
How to read.
How to read.
How to read.
How to read.
How to read.
読み方

どうしてこんな複雑になってしまったのだろう?

ホーマー

おそらく僕たちは「ホーマー化」しているのだ。

ホーマー・シンプソンは、理想の車のデザインを依頼されThe Homer(ザ・ホーマー)を作った。全権委任されたホーマーは、車にあらゆるものを付け加えた。クラクションを三つに、子供用の特別防音円形シート。すでに車にあるものをさらに付け加えていった。もっとクラクションを、もっとカップホルダーを。

The Homer
ザ・ホーマー

製品開発において、最も単純な発想は何かを付け加えることである。それは、古いものを新しいもののように感じさせる一番簡単な方法なのだ。難しいのは、製品を「今」の時代の文脈から考え直すことである。製品が開発された「あの頃」とはだいぶ変わった「今」の時代から。

僕たちの今

出版に従事する人々は、何年ものあいだ危機に直面している。しかしながら、自然の成り行きとして、楽しみなことも起きつつある。そしてまた、見逃すことのできない出版システム —— 伝統からは恩恵を受けず切り離されているもの —— が出現している。それも、次から次へと。[5]

数年前、「出版」のスタートアップ[6] を始める者は、次の二つどちらかのタイプだった。

  1. 伝統的な出版システムから切り離された技術者
  2. 技術者から切り離された伝統的な出版システムの従事者

出版のスタートアップたちが、あの限られた数年間に必要としていたのは両方だった。つまりインフラ設計や製品開発のできる技術者と、コンテンツを管理する出版システムの従事者だったのである。スタートアップたちが求めていたのは —— そしてしばしば欠いていたのは —— 両者の共感だった。

今はまた、事態が変わりつつある。出版従事者たちが扱うコンテンツの重要性が、新たなコンテンツクリエイターの出現により低下してきている。新たなクリエイターたちが次々と現れている。[7]

歴史に照らして考えると、The Huffington Post(ザ・ハフィントン・ポスト)やBuzzFeed(バズフィード)などのニュース集約サイトとして始まった新規参入者が、バリュー・ネットワークへと歩みを進めているのは驚くべきことではない。たしかに彼らは、かわいいネコの画像を集めることから始めたかもしれないが、いまやその領域を政治にまで広げ、情報の集積者からオリジナルコンテンツの生産者へと変貌をとげた。さらに、ザ・ハフィントン・ポストの場合、その報道でピューリッツァー賞まで受賞している。

— クリステンセン、スコック、オールワース

もっと最近の例を採り上げて、このトレンドの進化を見てみよう。

MATTER logo

Matter(マター)

2012年11月14日に創刊されたボビー・ジョンソンとジム・ジャイルズによる新しい出版物MATTER(マター)は、新たな出版のトレンドに参入する者たちが到達すべきクオリティを示す一つの指標となるかもしれない。2012年3月、彼らはKickstarter(キックスターター)で2,500人のサポーターから14万ドルを調達した —— Kickstarterは技術系スタートアップのエンンジェルラウンドに相当する。[8]

それを元手に、ウェブサイトを立ち上げ、作家や写真家に依頼をし、有料コンテンツと質の高いジャーナリズムが交差する未開の地への冒険を始めた。

彼らは言う。

MATTERはウェブサイトでもない、雑誌でもない、本の出版社でもない。MATTERはなにか別のもの —— 紙からデジタルへの移行で大きな打撃をうけた、質の高いジャーナリズムの新たなモデルである。長文の特集記事を1本ずつ売り、パソコン、携帯、電子書籍リーダー、タブレット、さまざまなデバイスで読めるようにするという我々の取り組みは、良い記事を生み出すのに費やされる多大な努力へ対価を払うための持続可能な方策となり得る。

ウェブサイトでもない、雑誌でもない、本でもない。なんて喚起的な言葉だろう。僕たちが電子出版者として活動しているあいまいな世界を、的確に表している。

創刊号は英語で7,826文字だった。サンプルを見ることもできるし、0.99ドルで購入することもできる。購入者がもらえるのは次のもの。

  • わずらわしさのないウェブ版
  • Kindle、iPad、その他リーダー対応版
  • 著者とのQ&Aへの参加権

彼らはまた、会員権も売っている —— 会員は編集委員としても参加できる。

MATTERは最も価値のある財産を築き上げようとしている。それはコミュニティだ。彼らは野心的で、才能に溢れている。そして彼らは氷山のほんの一角だ。

ウェブサイトでもない、雑誌でもない、本でもない。それが何であろうと、僕らはそうしたものを多く目にすることになるだろう —— すぐに。

ビジネスにおける装飾模写

装飾模写(Skeuomorphism/スキュアモーフィズム)とは元来、デザインの決定に用いられてきた。デジタルカメラには、昔のカメラを模した人工のシャッター音がついているが、その理由は、そうしたほうが気持ちいいからである。電子書籍のアプリに紙の本のようなページめくり機能がついているのは、そうしたほうが親しみやすいからである。

だが、装飾模写はビジネスにまで浸透している。

MATTERのような出版社は、古いモノのいい部分 —— 編集の美学、語り方、精巧さ —— を用いながら、内容の構成や流通のモデルを変更し、デジタルに適応させた。これはなかなかできることではない。

ビジネスの装飾模写は、あるメディアに強く結びついたビジネスを別のメディアに移す決断をした時に現れる —— それは疑いがない。装飾模写は出版ビジネスにも蔓延している。その如実な例が雑誌である。

Newsstand(ニューススタンド)のカバーを見てみよう。

Apple Newsstand screenshot
電子雑誌の「表紙」

どの雑誌の表紙も読めたものじゃない。これもデザインの装飾模写のように見えるが、それは違う。どんなデザイナーもニューススタンドの表紙を見て「完璧だ! 発送しろ!」とは言わないだろう。この事態は、ビジネス上の決定と、伝統に引きずられたインフラ設計によってもたらされている。[9]

カメラをぐっと引いてみると、事態はより明瞭になる。一般的な紙の雑誌は、次のような特徴を持っている。

  • 各号は、12かそれ以上の記事が掲載されている
  • 毎月1号のサイクルで発行される
  • 全ての記事は1つの本にまとめられ、同時に発送される

こうした特徴のほとんどは、流通と生産上の制約に適応した結果である。印刷と製本には一定の時間がかかる。発送にもまたかなりの時間を要する。内容のタイムリーさと本棚での寿命を考えたとき、月刊は —— 景気がいいときは —— とても理にかなったスケジュールだ。

古きを新しく

ではなぜ電子雑誌は、紙の雑誌と同じスケジュール、同じ記事の数で発行しているのだろう? しかも同じカバーを使って? もちろんそれは、メディアをまたいでも同じスケジュールを保つほうが簡単だからだ。二度もデザインせずに済むからだ。二度も(もしかしたら一度も)テストをせずに済むからだ。

残念ながら —— 電子書籍の使用体験という観点からすれば —— 伝統的な制約の上に成り立ち、そこから恩恵を受けるような電子向けの雑誌を作ることは、ほとんど不可能に近い。なぜか? それはとりわけ僕たちが、タブレットやスマートフォンを、紙の本とは全く別物として扱っているからだ。

新興の出版界に身を置く利点の一つは、複数のメディアにまたがって出版する必要がないということだろう。[10] 電子出版に特化して正面から取り組むことができるし、おそらくはそうするべきなのだ。もしかしたら今後 —— 市場の需要とコンテンツの品質が伴えば —— それを紙の本にしたアンソロジーの出版を検討できるかもしれない。紙の本は、電子で出版されていたものに、はっきりとした枠を与えることができる。[11]

じゃあ、いわゆる「電子向け」の特徴ってなんだろう?

「超小型」宣言

超小型出版のツールは何よりもまず分かりやすいものである。

インストラクションを(ほとんど)必要としない。

見ただけですぐに理解できる。

編集とデザインは、デジタルでの流通と消費を意識して決定される。

それは、テーブルの上に出版技術を並べて、次の問いに答えた結果である —— この材料で作れる一番シンプルなツールはなんだろう?

それは、いわば、リトルN360だ。

超小型出版ツールと編集美学の特徴としては、さしあたり次のようなものがある(これが全てではない)。

  • 小さな発行サイズ (3〜7記事/号)
  • 小さなファイルサイズ
  • 電子書籍を意識した購読料
  • 流動的な発行スケジュール
  • スクロール(ページ割やページめくりといったページネーションは不要)
  • 明快なナビゲーション
  • HTML(系)ベース
  • ウェブに開かれている

これらの特徴は互いに影響を与え合っている。それぞれ詳細を見てみよう。

Small issues

小さな発行サイズ

これまで僕は、電子書籍に「枠」を設けるということについてたくさん書いてきた。一番簡単で最も直感的にそれを実現する方法は、ユーザーに提示するデータの量を制限することだ。[12]

20個の記事が入った電子雑誌の大きさを直感的に把握することは、例えば5個の記事が入った電子雑誌よりもはるかに難しい。記事数を少なく抑えることは、ファイルサイズを減らすことや、シンプルなナビゲーションにもつながる。

small file size

小さなファイルサイズ

速さは、最近の多くのソフトウェアでひどく軽視されている —— 電子雑誌も例外ではない。速さ(と滑らかさ、そして快適な使用体験)は、実用最小限の製品を持ったとき、最大限に利用するべきものだろう。

ファイルサイズをできるだけ小さくすることは、製品に速さを与える一つの手段である。1号あたりの記事数を制限すれば、当然のことながら、ファイルサイズの縮小につながる。

reasonable subscription price

適正な購読料

理想的には、電子向けの商品を作り、商売を続けるために必要な金額が反映されるべきで、紙の雑誌の購読料を守るために設定されるべきではない。電子向けの雑誌にはまた別の利点もある —— 紙から電子に移行するのではないため、その移行に助成金が必要ないのだ。

fluid publishing schedule

流動的な発行スケジュール

各号のサイズが減ると、より流動的な発行スケジュールが可能になる。繰り返して言うが、電子の本に枠を設ける、つまり、雑誌の文量を知覚可能なものにするためには、1日10記事出版するよりは、多少ルーズなスケジュールであっても質の高い記事を少数出す方がいい。扱う内容にもよるが、日刊では細分化されすぎるし、月刊では詰め込む内容が多くなりすぎる。週刊くらいがデジタルの世界では丁度よく感じる。

scroll

スクロール(今のところ)

2012年、Books in Browsersの会議で僕が話したアイデアの中で、最も物議をかもしたのはページネーションを排除せよ、というものだった。僕は全てのページネーションが悪だと言っているわけではない。忘れないで欲しいのは —— ここで話しているのは超小型出版のコアの部分についてなのである。あまり関係がないことや、あまりに複雑なことはとりあえず削ぎ落として考えるべきなのだ。

僕はこの二年半近く、タブレットとスマートフォンにおけるスクロールとページネーションについて分析してきた。電子コンテンツには決まった形がないから、ページネーションは簡単にできるかもしれない。だが実際は、そうじゃない。

ある種のページネーションでは、アプリは重く複雑になってしまう。美しく、シンプルで、電子向けの、一貫した —— そして速い —— 超小型なものを作ろうとするとき、技術者たちにとってページネーションは高すぎるハードルなのである。

さらに言えば、ページネーションを排除してしまえば、とてもシンプルなナビゲーションが可能になり、ひいては、それを使うユーザーの心理的ハードルも下げることができる。

下手に付けるくらいなら、ページネーションはない方がいい。

clear navigation

明快なナビゲーション

ナビゲーションは一貫していて、簡単に理解できるものであるべきだ。超小型出版のアプリケーションに、込み入った「使い方」のページやチュートリアルは必要ない。有名な役者たちを雇って自慢げにアプリの使い方を説明させる必要などないのだ。紙の雑誌や本と同じように、使い方は直感的で、わかりやすく地に足のついたものであるべきなのである。ユーザーに迷いを与えるべきではない。

各号ごとの記事数を制限し、ページネーションを省くことによって、複雑なナビゲーションに陥ることも回避できる。

HTML

HTML(系)ベース

僕がHTMLと呼ぶものには、EPUBやMOBIやHTMLから派生したその他のフォーマットも含まれる。HTMLは、全ての文字コンテンツ(そしてインタラクティブコンテンツ)にとっての未来のフォーマットとなりつつあることは疑いようがない。超小型出版もHTMLで行うことにより、各プラットフォームへの将来的な移植性や耐用性を確保することができる。しかも、あらゆるコンピュータデバイスは高度なHTMLレンダリングエンジンが組み込まれているから、技術者たちへの負担も最小化できる。

open web

開かれたウェブ

これは単純。タブレット向けに出版された全てのコンテンツは、それと同一の内容を閲覧し、触れることのできる住まいを、開かれたウェブ上に構えておくべきである。

公共の住所を持たないコンテンツは、ウェブ上のあらゆるインタラクティブでシェア機能を備えたメカニズムの目に止まることはなく、存在しないも同然である。

出版における「解決すべき問題」理論

クレイトン・クリステンセン ——『イノベーションのジレンマ』の著者 —— は、消費者と製品の関係を「解決すべき問題」理論の観点から分析している。[13] 彼は言う。

基本的な考え方として、人々は何か買うものはないかと探しながらうろついているのではないということだ。人生は成り行きまかせで、問題に直面してからようやく、解決策を探し始める —— そしてその時に、人々は商品やサービスの力を借りようとするのだ。

こうした観点からビジネスを捉えるときに重要なのは、分析の基礎単位とすべきなのは消費者でも製品でもなく、「問題」の方だということである。

彼は最近の「ニーマン・レポート」で新聞業界の衰退について語っているが、そこで「コーヒーを買うのに並んでいて、10分時間をつぶさなければならない」という身近な例を採り上げている。「時間をつぶさなければならない」という問題に直面した人々は、それを解決するためにスマートフォンの力を借りて、10分を趣味や学びの時間にあてるのだ。

より現代的な問題

近年の電子出版に目を向けると、そこには、まだまだ、まだまだ、まだまだ満足のできない、解決すべき問題がある。長年僕をイライラさせていることの一つに、ウェブサイトや著者や出版社へお金を払って「購読」する際の良い方法がないという問題がある。自分が惚れ込むような新しいライターを見つけたとしても、簡単にそしてデジタルに合った形で、コンテンツにお金を払えることはほとんどない。

RSSのデータ保存と配信の構造は購読に適しているが、「一般の」消費者目線からすると、RSSは何のことだかわからない代物だろう(githubのないgitのようなものだ)。実際に消費者に寄り添った、より良いRSSを作ることが問題解決につながるだろう。

いわゆる「購読」は、配信後すぐに届き、手軽で、配信時期がわかっていて、きちんと動き、保存できるもののことを言う。「購読」は、内容に対する対価という側面もあるが、実のところ、「購読」という問題に対して、著者や出版物が提供する解決策にお金を払っているのである。僕たちは結果として内容を受け取っているにすぎない。

システムの概要

手始めに、最もシンプルなパソコン上での編集システムについて考えてみよう。

A wireframe of a simple editorial system
シンプルな編集システム

3つの欄がある。「号」の欄、「記事」の欄、そして「記事内容」の欄。「号」をクリックすると、その号の「記事」が現れる。「記事」をクリックすると、その記事内容が現れる。そして「出版」ボタンがある。それだけ。

ではどこに出版するのか?

開かれたウェブ

ほとんどのコンテンツは —— どのような文脈であれ —— 誰でもアクセス可能な公共の住所を持って初めて利益が生まれる。なのでどう考えても開かれたウェブ上には最初に出版するべきである。

そしてそれはとっても簡単。僕たちはこの20年近くその方法に親しんできたし、ウェブ上での出版ツールは大量に用意されている。

ウェブはまず第一に読みやすいし、アプリのダウンロードやメール購読へと導いてくれる。しかし何をするにしても、読みにくくだけはしてはいけない。読みにくくなるとシェアされにくくなる(読みにくいものは誰もシェアしたがらない) —— シェアされることこそが、ウェブ上での出版の目的なのだから。

タブレットとスマートフォン

パソコン —— 開かれたウェブ —— での出版は簡単だ。タブレットとスマートフォンはまだ難しい。

Publishing to tablets?
ウェブでの出版は簡単、タブレットで苦もなく出版することは不可能

タブレットとスマートフォンは、パソコンやノートパソコンとは使用用途が違う。スマートフォンのユーザーはコンテンツをサクッと「かじって」手軽に消費したいのだ。ウェブはコンテンツにアクセスする最短の方法とは言えない。ウェブは(大抵)オフラインで読めるキャッシュ機能がなく、インターネットに接続していないとアクセスすることができない。

シンプルに考えるために、ここではiOSデバイスに向けた出版に焦点をあててみよう。編集システムから自然に、とてもスムーズに読者へとコンテンツを運ぶシステムはないものか……

Newsstand(ニューススタンド)

あ! あるじゃないか —— Appleのニューススタンド!

え、Appleのニューススタンド? 「それって、あの怪物たちのいるところ?」そう言う声が聞こえてくる。あるいは、「ああ、一回も開いたことないあのフォルダね!」という声が。

ニューススタンドはおそらく、この短いタブレットの歴史の中で最も活用されていない、そして最も見過ごされている流通ツールだろう。しかし、見方や考え方をちょっと変えてみれば、ニューススタンドの不思議な力に気がつくはずだ。ニューススタンドは、自動ダウンロード機能を備え、オフラインでも使用可能で、キャッシュ機能も備えたRSSリーダーで、購読に適した容れ物なのである。しかもお金を払うこともできる。

ニューススタンドは、「解決すべき問題」に、シンプルな解答を与えている。

The Magazine(ザ・マガジン)

そこで再び、The Magazineである。

この雑誌のクリエイター、マルコ・アーメントは次のように語っている。

The Magazineは「雑誌業界」に位置するものとは思っていない。「出版業界」に位置するブログだとも思っていない。それらは古く、確立されたイメージだが、この雑誌はもっと新しく、実験的なものなのだ。

彼はさらにこう続ける。

多くのiPad雑誌は、紙の習慣に引きずられて、不必要に多くの、そして高価な内容を提供している。電子向けにつくられた雑誌でさえ、紙時代の余分な要素を必要だと思って素直に取り入れている。[14]

ある意味で、マルコはN360を生み出した。彼は真にタブレット向きの超小型出版物をデザインし、プログラムしたのである。

  • 各号4〜5記事のみ
  • 各号の大きさは数メガバイト以下。ダウンロードに数分や数時間かかる多くの電子雑誌とは違い、数秒でダウンロードできる
  • 購読料は月1.99ドル
  • ニューススタンド経由でプラットフォームへスムーズに配信される
  • 出版は月2回
  • ページネーションなしのアプリケーション
  • 読み方は一貫していて、完全に直感的
  • HTMLベース

機能と使用体験

これはアプリとはほとんど関係がない。メインスクリーンには3つの選択肢がある。

The Magazine's main interface
The Magazineのメインページ
  • 上下にスワイプして記事を読み進める
  • 右上のボタンを押して今読んでいる記事をシェアする
  • 左上のハンバーガーボタン(図1)を押して目次を表示する

それだけ。それ以外何もできない。

もう少し深く考えてみると、機能はさらに減らすことができる。シェアボタンが使われることはほとんどないだろう。ハンバーガーボタンだって余分だ。左から右へとスワイプすれば目次は表示できるのだから。

The Magazineは使い方やインストラクションのページ、チュートリアルのビデオを必要としない。このアプリは、これまで僕たちが親しんできた紙の本の直感的な操作性をまねて作られている。

The Hamburger Button
図1:ハンバーガーボタン

各号

各号のサイズを小さく保つため、The Magazineは目次の複雑さを省いた。各記事の長さを「縮小表示」したり見取り図に表したりする必要はない。1号につき4つか5つの記事だけならば、読者は文量の枠を直感的に把握することができる。ナビゲーションはシンプルなリストだけでいい。

Table of contents as a simple list
シンプルで、直感的な、文量の枠を把握できる目次

各号はスワイプすれば削除でき、一覧からだるま落としのように消えていく。削除した号をタップすれば、数秒でまたダウンロードできる。

リンク

The Magazineはリンクの扱いも優れている。リンクをタップすると、リンクの注釈版が画面下部に現れる(iPadの場合はポップオーバーで表示される)。脚注も効果的に使える。著者はリンクの内容を要約し、読者はそれを見て、元のURLへアクセスしたいと思ったら、もう一度タップすることでそのサイトを訪れることができる。

Footnotes in The Magazine
リンク/脚注

結果として非常に「安定した」読書環境になっている。そこには間違って押してしまうボタンもない。どこにいるかわからないなんて混乱もない。The Magazineには二つの場所しかない。記事を読む画面、そして横にスクロールして出てくるシンプルな目次だけ。

ニューススタンド

The Magazineを見ていて一番驚くのは、Appleのニューススタンドの活用法かもしれない。ニューススタンドは二つの決定的な機能を果たしている。

  • コンテンツの自動ダウンロード
  • 定期購読

第三機関のアプリの内容更新が自動ダウンロードされるのは、iOSの中ではニューススタンドだけだ。これが何を意味するかというと、マルコがThe Magazineの出版ボタン(名前はなんであれとにかくそれに相当するボタン)を押すと、ほとんど同時に新しい記事がニューススタンドで読めるということだ。つまり読む側は、飛行機や地下鉄に乗る前に焦って最新情報に更新する必要がないのである。最新号が出れば、キャッシュされたデータがあなたを待っていて、オフラインで楽しめる。

ニューススタンドはまた、複雑さを省いた安心できる支払いシステムを持っている —— 僕たちはマルコではなく、Appleに支払うのである。このシステムにより読者は自由に購読を始めることができるし、その後で —— スムーズに —— 自動更新の月額払いへと移行できる。

開かれたウェブ

そして最後に —— 当然のことだが —— The Magazineはウェブにも進出する。

The Magazine on the open web
ウェブ上のTHE MAGAZINE

the-magazine.orgは二つのことに焦点を絞り、最小の装備で最大の効果を目指している。それは、読んでもらうこと、そしてダウンロードしてもらうことである。

今の段階では、全ての記事をオンラインで読むことはできない。ぜひ、全文公開と部分公開でA/Bテストできればと思う。僕の直感では、全文公開しても、アプリをダウンロードし購読する人の数は減らない。だけど、全文公開すればシェアの数が飛躍的に伸びるはずだ。

ユーザーは、部分公開のものより全文公開の記事をシェアする傾向がずっと高い。シェアの数が増えれば、サイトを訪問する人の数が増える。サイトを訪問する人の数が増えると —— 全文公開でもダウンロード/購読の比率が減らないとすれば —— ダウンロードや購読者の数も増える。

クリステンセンの「解決すべき問題」の観点からすると —— 読者はたんに記事全文にお金を払っているのではなく、The Magazineが提供する、キャッシュされ、シンプルで、洗練された、この上なくアクセスしやすい読書体験に喜んでお金を払っているのである。

Subcompact publishing in seven screens
THE MAGAZINE:超小型出版の7つのスクリーンショット

「コンテンツは出版されてどこに行く?」超小型編集システムが提起した問いに、The Magazineはほんのわずかなスクリーンで答えている。

簡潔さ

The Magazineの簡潔さは胸が踊る。簡潔なだけでなく、かつての出版業従事者たちが尻込みしていたようなアプリだからさらに胸が踊る。こういうものを待っていた。再び、クリステンセンから引用する。

一般的に、破壊的テクノロジーはメインの市場で確立された製品には及ばない。しかし、そこにはわずかな(そして大抵新しい)顧客価値が生まれるという別の利点がある。破壊的テクノロジーに基づいた製品は、概して既存の製品より安く、シンプルで、小さくて、そして多くは、使いやすいものである。

僕たちは新しい顧客だ。新しい読み手で、新しい書き手で、新しい売り手だ。The Magazineは他のアプリよりも、実際に安く、シンプルで、小さくて、使いやすい。

The Magazineのようなミニマルな容れ物が、探究心旺盛なMATTERの編集美学と結びつくことは想像にかたくない。そこにはより魅力的なものが生まれるはずだ。

じゃあどうしてMATTERはニューススタンドで出版しないのかって? それは、ニューススタンドに「iOSアプリケーションを作らなければならない」という最大のハードルがあるからだ。出版を目指す多くの者にとって、アプリ作成は非常にコストのかかる試みなのである。それから、さらにやっかいなことに、そういう者たちは大抵ソフトウェアに疎いのである。

プログラマーのマルコが、最も「電子向きの」タブレット出版物を刊行したという事実は、二つのことを示唆している。

  1. プログラマーは現代の奇術師である。多くの業界でそれは明らかだが、ついに出版界でもそのことが明らかになりつつある。マルコがすぐにThe Magazineを生み出すことができたのは、ニューススタンドが十分に活用されていないこと、そして可能性を秘めていることを知っていたからだ。そしてそのことを知っていたのは、彼がプログラマーだったからだ。ニューススタンドが発表されたのは出版会議においてではない。ニューススタンドはWWDC(世界開発者会議)で発表されたのである。
  2. 出版のシステムは今、完全な崩壊を目の前にしている

ポール・グレアムはStartup Ideas[スタートアップのアイデア][15] というエッセイの中で、マルコのようなプログラマーを指して、自発的生産者と呼んでいる。

ハックの方法を知っているということは、アイデアを思いついたとき、それを実装できるということだ。そうすることが絶対に必要という訳ではないが(ジェフ・ベゾスもできなかった)、利点ではある。そしてそれは大きな利点なのだ。学生たちの顔写真をオンラインで公開しようなんてアイデアを思いついたとき、「それは面白いアイデアだ」と考えるだけでなく、「それは面白いアイデアだ。今夜試作版を作ってみよう」と考えることができる。自分がプログラマーであり、想定ユーザーであるとなお良い。なぜならそうすれば、新しいバージョンを作ってユーザーで試すというサイクルが、一つの頭のなかでできるからだ。

マルコはただの出版志向のエンジニアなのではない。彼は超小型出版界の大物なのである。彼はいわゆる「出版」従事者たちの輪の外側で幸せに過ごしている。そのスタンスで、ポッドキャストや、雑誌や、読書アプリや、キュレーションした読書リストの作成を行って……それらを全て小さな容れ物に包みシンプルなツールとして発表している。

未来の出版界の破壊者になるには、テクノロジーに目を開く必要がある。たとえ自分がテクノロジーに向かない人間だとしても。

破壊と混乱のただなかで

僕たちは今、分水嶺に立っている。ツールとシステムの洪水が押し寄せている。それらはこれまでの出版システムとは関係がなく、これから湧き上がる新しい波に関係している。

ポール・グレアムのエッセイを再び引用しよう。

スタートアップが既存のシステムを食うとき、総じてスタートアップは、大企業が無視している小さいが重要な市場に仕えることから始めている。大企業の態度に軽蔑のようなものが見られたら特に良い。なぜならそうした軽蔑は、彼らを誤った方向へと導くからだ。

2012年の冬は、消費者の波が押し寄せる最初の休暇シーズンだろう。タブレットに目を開かれた彼らの前には、さしあたり十分な選択肢が用意されている(価格帯も含めて)。2013年が電子出版にとって —— そして特にシステム従事者でない者たちにとって —— 転換の年にならなかったとしたら、僕にはもう、なぜ市場が動かなかったのか考える術がない。

現状のツールはまだ少しずさんで、まだ少しダサいし、過去を引きずり過ぎている。The Magazineは、ニューススタンド —— 既存の活用されていないツール —— を電子に適したスムーズな配信ツールとして活用した、超小型出版の最初の優れた例である。

他の多くの者たちが、似たような雑誌を立ち上げなかったとしたら驚きだ。いや、むしろそれでいいのかもしれない。The Magazineのようなニューススタンド用アプリを —— 最小のコスト、最小の労力で —— 誰でも作れるようなシステムができるのならば。

無視するのは簡単だ。
軽蔑する人もたくさんいる。
でも、世界を揺るがす側の人間になってみてはどうだろう?

電子出版のネジやバネ、ドライバーやボルトを持ち寄って、古いテーブルに並べる。ハシゴを登ってテーブルを見下ろし、自分に問いかける。
「どんな超小型出版を作ろうか?」

A tiny N360

記事の補足、インスピレーションを受けたもの、それから謝辞

このエッセイ —— 超小型出版という概念 —— は、以下のものから大きな示唆を受けた。

クリステンセンは、上のレポートの追加のインタビューを受けていて、こちらも一読に値する。関係する箇所も、関係ない箇所もあるが、TEDでのスピーチも行っている。もし、僕のように、あなたが宗教的でなければ、「God」という言葉を頭の中で「Google」という言葉に置き換えてみて欲しい。すると、あらゆることが理解できる。(「あなたが死んだとき、グーグルがあなたを裁くでしょう」 —— そうかも、グーグルが僕を裁く!)

注釈にいくつかリンクを貼ってあるが、N360は本当に美しい小さな車だ。この車に乗ってドライブがしたいと思い続けていて、強迫観念に近いものになっている。

こんな素晴らしい製品を作りあげた全ての人々に感謝する(有名無名問わず —— あなたのことですよ、名も無き戦後ホンダの技術者たち)

Footnotes

  1. Clay Christensen on the news industry: “We didn’t quite understand…how quickly things fall off the cliff”[クレイ・クリステンセンがニュース業界について語る「すごい勢いで崖から転げ落ちていることに私たちは気付いていなかった」]、ニーマンレポート、2012年10月
  2. N360に関心を持った方はWikipediaを見て欲しい。N360をバッテリーで動くように改造した人もいる。日本の出版社の重役にN360のことを話してみると、彼らは嬉しそうに笑って、N360への愛を懐かしそうに語ってくれた。「N」とは「乗り物」の「N」だが、コロコロと素早く動くため「Nコロ」という愛称で親しまれている。
  3. Breaking News: Mastering the art of disruptive innovation in journalism[ジャーナリズムにおける破壊的イノベーションの作法を知る]、オールワース、クリステンセン、スコック、ニーマンレポート、2012年10月
  4. Books in Browser2011で僕は「ひたすら・ページを・進めばいい」というアイデアを提唱した。読書アプリにも、紙の本のようなひたすら進めばいいという直感的な読み方を課す/埋め込むべきだ、というものである。
  5. 何十年にも渡って現れ続けてきた、と言うべきかもしれない。技術史的には、より良い消費デバイスの到来を予期して、電子出版のツールとインフラの工夫と洗練を積み重ねてきた。ブロガーが出現したのが1990年代後半。LiveJournalやジオシティーズも現れた。これらのプラットフォームには時代が追いついていなかった。Twitterもまた、そうして現れたプラットフォームのひとつだが、アーカイブには向いておらず、どちらかというと、出版のカテゴリーよりも放送のカテゴリーに入るのではないかと思っている。
  6. 「出版のスタートアップ」がここで意味するものは、「伝統的な」出版との協力を目指すもののことである。つまり、「本」や「雑誌」というアウトプットにこだわる出版社ということだ(本がどんな形態であれ)。「容れ物」にこだわる会社。著者を育てたり、複数の出版社と協力する会社。昔のコンテンツをタブレット版にする、もしくはタブレット用のコンテンツを製作することに特化した会社。彼らはブロガーやワードプレスとは違う。近いけれども、やはり違う。そこには、ちょっとした、特定の技術的決断の違いがある。
  7. ここには一言付け加えておかなければならない。もちろん多くの出版従事者はいまだ重要である。しかし、「今から」出版のスタートアップを始める者にとっては、動きの遅い出版システムに立脚することにあまり意味はなく、新たなコンテンツのクリエイターたちと組む方がいい。今のスタートアップにとっては、そのクリエイターたちのプラットフォームになる方が、出版システム従事者たちのプラットフォームになるよりもはるかに意味がある。両方を叶えることができれば —— 君の大勝利! だが歴史を見るに、それはどうも難しい。
  8. エンジェルラウンドでは、資金援助者に株式譲渡の必要はない。Kickstarterの大きな利点である。MATTERのウェブサイトはこちらreadmatter.com。彼らのKickstarterでのプレゼンの様子も見てみよう。
  9. 表紙については「表紙をハックせよ」に詳しい。craigmod.com、2012年6月
  10. だが複数のプラットフォームに対応できるようにはするべきだろう —— でもこれはまた、別の問題だ。
  11. More on edges: Mod, Craig. How magazines will be changed forever. CNN, October 2012
  12. おそらく、消費しやすくするためにデータを制限するという方法を最もうまく活用しているのがFacebookだろう。Facebookのニュースフィードは、情報の文脈化、そしてデータのフィルタリング機能をもつ近代の奇跡と言えるが、そのことはほとんど注目されていない。このアルゴリズムはどのユーザーにも適用されていて、ユーザーにとって必要なフィードの速度と密度を保っている。「伝統的」な出版界での議論とは、ほとんど関係がないが、考え続ける価値のあることだろう。
  13. 「解決すべき問題」についての詳細はjobstobedone.org
  14. Foreword[序文]、マルコ・アーメント、The Magazine、2012年10月
  15. Startup Ideas[スタートアップのアイデア]、ポール・グレアム、paulgraham.com、2012年11月
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著者について

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謝辞

ピーター、エリン、アシュリー、そしてマックスは、鋭い洞察とインスピレーションを与えてくれた。

著作権

全ての画像(もちろん、該当する画像、という意味)と文章はクレイグ・モドに帰属する。

この作品は、クリエイティブ・コモンズの表示-非営利-継承ライセンスに則っている。この文章を何らかの形で商業利用するには許可が必要です。僕に連絡をください。

Creative Commons License
This work is licensed under a この作品は、クリエイティブ・コモンズの表示-非営利-継承3.0米国に則っている。.

このエッセイが書かれた場所(だって覚えておきたいでしょ)

これを書いた場所はびっくりするくらい少ない。

主にカリフォルニア。といっても —— よくよく考えてみたら、カリフォルニアのあちこちで書いている。書き始めたのはジョシュ・クイットナーとのランチの後、そしてマルコがThe Magazineを創刊した。Internet Archiveがアーカイブするデータ量が10ペタバイトを突破し、Books in Browsersでプレゼンをすることになり、このエッセイの骨格を作り上げることとなった。それからは、カリフォルニアのパロアルトの畳のようなものの上で。いつものように激しく揺れるカルトレインの中でも書いた。ワタという農場が作る素晴らしい豆からできたエチオピアコーヒーが僕の活力だった —— これはFOURBARRELで買える。あとはサンフランシスコのサウス・オブ・マーケットにあるCentoのコーヒーも飲んでいた。Red Rock、Coupa、ユニバーシティ・アベニューのLa Boulangeでも書いた。読んでくれてありがとう。